判定日のβhCGの目安は?胚移植後7日目、16日目の値は?子宮外妊娠の可能性?(KLC/研究)
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体外受精で、移植という壁を無事に突破すると、次は判定日という壁がありますよね。
初期胚(分割胚)移植では12日後、胚盤胞移植後では7日後 (妊娠3週5日)に採血をします。
それでは、どのぐらいβhCG値があれば安心できそうなのでしょうか。
加藤レディスクリニックが発表した論文から、そこのところを考えてみたいと思います。
KLCならではのhCG値?
以前も記載した通り、KLCではhCG注射を使用しませんし、この値によっては採卵周期に入ることができません。
KLCとhCGについて↓↓
hCGに対する加藤レディースクリニックの方針 - 不妊治療は未知の世界
採卵できなかったときの体験↓↓
KLC① 初診 D3 βhCG値のせいで空振りに… - 不妊治療は未知の世界
「hCG注射を使用すると7-11日程度血中に反映される」そうです。
通常、hCG注射の影響は判定日にはほとんど無くなっていると考えられますが、もしかしたらβhCGがとても低いはずなのにhCG注射の影響が出ているということもあるかもしれませんね。
だからこの研究は、hCG注射を使用せず、症例数の多いKLCだからこそできると言えるのかもしれません。
体外受精における判定日血中βhCG値と異所性妊娠の後方視的検討
安藤郷子, 中川優子, 洲河美貴, 濱田雄行, 藤田裕, 伊藤正典, 佐藤團, 田中慧, 倪暁文, 土山哲史, 和田恵子, 福田淳一郎, 谷田部典之, 篠原一朝, 山崎裕行, 奥野隆, 小林保, 加藤恵一
加藤レディスクリニック
日本受精着床学会雑誌 35(1): 10 -14 2018
体外受精における判定日血中βhCG値と異所性妊娠の後方視的検討 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
体外受精などでは胚移植後の判定日の血中βhCG値と妊娠予後はよく相関することが知られています。
そのため、きちんと指定された判定日に来院することが妊娠予後を予測するために重要なことなんですね。
判定日のβhCGの目安は?
この研究は、加藤レディースクリニックにおいて、2013-2015年までの間に、GnRHアゴニスト(スプレキュア)を投与し、単一の融解胚盤胞を移植した22,399周期が対象です。
対象者の採卵時および移植時の平均年齢は、それぞれ38.6±3.9歳,38.9±3.8歳でした。
対象者数は不明ですが、この移植周期、2年間のみにしてはかなり多いですよね。
平均して毎日30人の女性が胚盤胞の移植を受けていたことになりますね。
平均年齢は30代後半で、移植時の平均年齢のほうがやや高くなっています。
以降の図表では、凍結融解胚盤胞移植から7日目(妊娠3週5日)のβhCGが1mIU/mL以上の14,929周期を対象に検討されています。
この表を見ると、移植7日後の判定日で、生産(無事に出産できた人)のβhCG値は平均71±35mIU/mLのようです。
化学流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)のβhCG値はかなり低めですが、結果的に流産となってしまった人のβhCG値は平均51.4±29.8mIU/mLと生産に近いですね。
やはり、判定日にβhCG値100mIU/mL以上あるとかなり安心できそうな印象です。
平均値の隣のカッコ内でβhCGの範囲を見てみると、判定日に2.8mIU/mLしかなくても出産できた人がいるのは勇気づけられますね。
ただし、流産のβhCGの範囲でも、たとえ100以上あっても流産や化学流産となった方はいるようです。
その理由としては主に以下の2点が考えられます(みち子の意見)。
- 双子の可能性:一つの胚盤胞を移植しても、一卵性双生児となる可能性はありますが、この研究ではその背景の分析はされていません。そのため、双子で流産や化学流産などの場合、hCGが高くなっていた可能性もあります。
- 年齢別の検討がない:女性の年齢が上昇するにつれ染色体異常の確率は上昇しますが、本研究では年齢毎に比較していません。流産は22週未満のことをさすので、例え着床できて十分にhCGの分泌が確認できても、どこかで流産となってしまった可能性もあります。
βhCGの伸び率はどのぐらいあれば安心? doubling timeとは?
判定日のβhCGだけでなく、その後の伸び率も重要です。
doubling timeとは倍増する時間のことで、2倍になるのに何日かかったか?ということが今後の妊娠転帰を予測するのに重要なんですね。
血中βhCGのdoubling timeは以下のように考えられています。
- 妊娠4-5週で約2日
- 妊娠6-7週で約3日
体外受精における子宮外妊娠(異所性妊娠)
本論文の主眼は、結果的に異所性妊娠だった人の判定日のβhCG値がどうだったか?です。
なぜかというと、体外受精や顕微授精では子宮外妊娠となるリスクが自然妊娠よりも高くなるからです。
「ARTでは異所性妊娠の発症率は自然妊娠と比べて頻度が2.5-5倍程度に増加する」という報告があります。
また、その傾向は、「胚盤胞より初期胚で、凍結胚より新鮮胚移植で発症率が上昇するとされており,融解胚盤胞移植では異所性妊娠の発症率は0.3-0.97%程度」です。
下の図1では、判定日に血中βhCG値が20mIU/mL未満だった方を4つのグループに分けて、その妊娠転帰を示しています。
この各棒グラフでは、一番上が異所性妊娠で、次が化学流産、流産、生産と並んでいます。
つまり、判定日に一番右側の棒グラフ(15.0≦βhCG値≦19.9mIU/mL)のグループだった768名は、結果的な妊娠転帰として、異所性妊娠が0.7%、化学流産が65.8%、流産が18.1%、生産が14.6%だったということになります。
768名中生産14.6%なので、112名ほどが出産されたことになりますね。
4本の棒グラフを左に見ていくほど、化学流産の割合が増えていき、生産の割合は少なくなっています。
ちなみに、判定日にβhCG低値 (1≦βhCG値<20mIU/mL) の症例のうち、全体の0.43%が異所性妊娠だったようです。
異所性妊娠における血中βhCG値の推移
次の図3は、移植後7日目と移植後16-18日目のβhCGの推移についてです。
異所性妊娠では判定日から9-11日後にあたる移植後16-18日目のβhCGの平均値は1,755±1,524mIU/mLであり、βhCG上昇率の平均値は140.7±113.9倍でした。
著者らは、下記のように締めくくっています。
卵胞成熟誘起や黄体賦活目的でhCG注射を用いている施設では, βhCG値が注射の影響とみなされやすい. また尿中ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキットで判定を行っている施設では, 低値のβhCGを見落とす可能性がある. 時期をあけての2回測定ならびに患者への異所性妊娠の可能性の言及が必要と考える.
まとめ
- 単一の融解胚盤胞を移植してから7日後の判定日で、最終的に無事に出産できた人のβhCG値は平均71±35mIU/mL(範囲:2.8~411.5)でした
- 判定日のβhCG値が15.0~20mIU/mL未満であっても、14.6%が無事に出産できていました
- 判定日にβhCG値100mIU/mL以上あるとかなり安心できるかもしれません
- 判定日のβhCG値が1.0~20mIU/mL未満の中で、全体の0.43%が子宮外妊娠でした
採卵3日目に早期にコンパクション化した胚の着床率(新鮮胚3日目移植は得か??)↓↓
みち子が妊娠した際のβhCG値(新鮮胚3日目移植:早期コンパクション胚)
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